| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-236

造巣性端脚類 Bubocorophium sp. の同居巣存在比の季節変動

*阿久津 崇, 青木 優和(筑波大・下田臨海)

砂底表在性端脚類 Bubocorophium sp. は、貝殻や砂粒を接着して携行型の巣を造る。本種は、巣から前体部を出して発達した第2触角で基底面を打つことにより、後方へ跳ねるように移動する。多数の個体が海底で動く様子は、さながら「動く砂」である。静岡県下田市大浦湾南東部水深10 mの砂質底における2010年 4月の調査からは、1つの巣に1個体が入る「単独巣」と2 – 8 個体が1つの巣に同居する「同居巣」が区別され、巣形態の観察から同居巣は単独巣どうしの接着で構築されたと考えられる。同居巣は全巣数の29% を占め、全個体のうち60% が同居巣を利用していた。同居巣における個体の構成にオス-メス、オス‐メス‐幼体、メス‐幼体、という3タイプがある。また、同居巣内には幼体が多く存在しており、同居巣構築が繁殖に関係することが示唆されている。

現在、野外個体群中における同居巣出現頻度や同居巣内の個体構成の季節変動についての検討を進めており、野外調査は2010年4月から 2011年1月に毎月1回行っている。口径60mmのコア6個で採集したBubocorophium sp. は巣ごとに5% ホルマリンで固定し、それぞれに含まれる個体の体長、雌雄、抱卵数、卵サイズを計測している。これらについて同居巣存在比や繁殖形質の経時的変化に関する解析を進め、同居巣が繁殖にどのように関与しているかについての解明を試みる。


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