| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-239

シャープマメゾウムシにおける休眠経験の有無に関連した卵サイズ変異

*川本さつき,石原道博(大阪府大・理)

シャープマメゾウムシは多化性で、寄主植物クララの結実して間もない未熟な柔らかい種子から成熟乾燥した硬い種子まで一貫して利用することができる。野外で本種の卵サイズを調べたところ、柔らかい莢に産卵する越冬明け世代成虫は相対的に小さな卵を、硬い莢に産卵する第1世代成虫は相対的に大きな卵を産んでいた。生活環の中で、越冬明け世代成虫は幼虫休眠を経験しているが、第1世代成虫は幼虫休眠を経験せずに産卵している。そこで、成虫の休眠経験の有無によって卵サイズが変化するかどうかを調べるために、人為的に休眠を経験させて羽化させた個体(休眠処理)と休眠を経験せずに羽化させた個体(非休眠処理)との間で、完熟乾燥した種子に産んだ卵サイズを比較した。休眠処理個体は22℃,10L14Dの短日条件で卵から90日間維持することで休眠を誘導した後に、5℃,10L14Dの低温処理を50日間行い、その後22℃,16L8Dの長日条件に移して休眠を覚醒させた。非休眠処理個体は22℃,16L8Dの長日条件で休眠させずに羽化させた。その結果、休眠を経験しなかったメスに比べて休眠を経験したメスは有意に小さい卵を産んだ。また、生み付けられた卵が羽化するまでの生存率は非休眠処理のメスが産んだ大卵由来の方が有意に高かった。この結果から、休眠経験の有無が成虫が産む卵サイズを変化させることで、野外で硬い種子に産卵する非休眠メスに大きな卵を産ませて幼虫の生存率を高めていると考えられた。


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