| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-241

捕食圧と種間競争の違いに対応したシモダマイマイの生息場所、殻形態、生活史の変異

葛西直子(東邦大院・理・生物),長谷川雅美(東邦大・理・生物)

シモダマイマイEuhadra peliomphala simodaeは、伊豆半島南端から伊豆諸島(大島、利島、式根島、新島、神津島)に分布する地上-樹上性の陸生有肺類である。シモダマイマイの殻彩には、大別してクリーム、バンド、ブラウンの3パターンがあり、半島部と島嶼集団間の遺伝的分化が小さいにも関わらず、本土の半島集団と比べて、島嶼集団における殻彩の多様化と島嶼間での顕著な分化を示すことが先行研究によって明らかにされている。本研究では、シモダマイマイの生活史形質(成熟時の殻サイズと年齢、成長速度)と殻の形態に注目し、伊豆半島の3集団と伊豆諸島の5集団間で比較し、その地理的変異を明らかにした。さらに、生活史形質と殻形態の地理的変異が、半島部と各島における捕食者相と近縁種の存在に対応した変異を示すのかどうか、各集団の生息密度と微小生息場所の調査結果をもとに解析した。

伊豆諸島には、シモダマイマイのような大型陸貝を捕食する肉食哺乳類と地表徘徊性甲虫(マイマイカブリ、伊豆大島を除く)が生息しないことと対応し、半島部と比べて、生息密度が高く、地上部を利用する個体の割合が高かった。また、半島集団では成熟個体の割合が5%未満であり、島嶼集団における割合(30-55%)と比べて著しく低かった。成熟個体の殻サイズ、成長速度、成熟年齢、殻形態には島間で有意な違いがみられたが、島嶼における生存率の高さ、高密度化、及び生息場所の拡大と生活史形質との明瞭な対応関係を見出すことはできなかった。


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