| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-033
高密度の植物群集では資源をめぐる競合がある。とりわけ光については上位にいる個体が有利で、その優位さゆえさらに成育が促され、下位との差は開く。従って最初に上位に出た個体はずっと上位を保ち、下位の個体は上位個体が死んでギャップが空くまで上位には行けない。
こうした俗説は、1年生草本や陽樹群集では正しいのかもしれない。しかし一般の状況は決してそう単純ではない。
青森県八甲田山麓に、伐採後に更新したブナ2次林がある。極めて密度が濃く、ブナが圧倒的に優占している。ここに10m幅で総延長140mのプロットを設置し、胸高直径3cm以上の樹木の胸高直径と樹高を2004年から追跡している。
全体的には、確かに上位個体の成長が高い。しかし、現場とデータをよく観ると、あちこちで樹高や上下関係が逆転している。
ここでは、こうした単純ではない樹木群集の成長パターンについて報告する。単純なモデルの活用で、反例的な現象はみつけやすくなる。空間データの「見方」でも工夫が要求される。そうした予備解析を伴わない、安直な出来合いソフトに代入するだけの「解析」は、最も注目すべき現象を見逃しているのかもしれない。