| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-041
異なる植物群落間の境界をエッジと呼び、エッジを挟んだ群落が混ざり合ってできた移行帯をエコトーンと呼ぶ。エコトーンの位置や幅を検出する解析のために、現在、様々な試みがなされている。De’ath (2002) は、多変量回帰木 (Multivariate Regression Trees:MRT) は、種と環境間の関係のモデリングに有効な解析法であると述べている。本研究では、様々な草原‐森林エッジにおいて、MRTによるエコトーンの検出を行った。
調査地は山梨県富士山北西麓の標高約1,300mの野尻草原と、草原に隣接している青木ヶ原樹海である。野尻草原はかつて採草地として利用され、定期的に火入れが行われていた。現在の草原の優占種はススキとトダシバで、一部に低木が侵入している。
調査区は草原‐森林間のエッジを横切るようにして0.5m×50mのトランセクトを設置した。起点は草原内、25m地点を境界、50m地点を森林内とした。トランセクト上に0.5m×0.5mの隣接した100個のコドラートを設置し、コドラートごとの全出現種の出現頻度、群落高、光量子密度等の測定と、優占種の記載を行った。トランセクトは草原‐樹海エッジに2ヶ所、草原‐アカマツ林エッジ、草原‐ミズナラ林エッジの計4ヶ所に設置した。
MRTによる解析を行った結果、エコトーンの位置と幅の推定及び、Smith (1996) によるエコトーンのタイプを推定することができた。例えば、草原‐樹海 (広葉樹) エッジでは、トランセクトの13.5~27.5m地点がエコトーンであり、エコトーンのタイプは、草原側に森林側の群落が発達して形成されたエコトーンであると推定できた。MRTはエコトーン研究の有効な解析法である。