| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-046
森林の構造と動態を理解する上で地表の起伏に対応した森林の地上部バイオマスの分布を理解することは重要である。これまでの研究で、活発な浸食作用によって複雑な地形が形成されている地域では、比較的地表が安定していると考えられる尾根上に大径木が分布していることが明らかにされており、このため、尾根上のバイオマスが谷周辺に比べて大きいと推定されている。しかし、この結果は樹木の胸高断面積のサンプリング調査から推定されたものであり、樹高については考慮されていない。森林のバイオマスの正確な分布を推定するためには、林冠高を含めた森林の3次元構造を詳細に把握する必要があるが、調査の困難さからそれらの情報は不足していた。しかし近年、航空機に搭載されたレーザセンサー(LiDAR)を用いた広域・面的な計測の有効性が指摘されている。
本研究では、神奈川県丹沢山地においてLiDARによって得られた計測結果を用いて林冠高を表現する10m×10mのDegital Canopy Model(DCM)を作成し地形構造との対応について解析した。その結果、林冠高は尾根部・緩傾斜地で低くなり、谷部・急傾斜地で高くなることが示された。これは樹木の胸高断面積(BA)の分布と逆の傾向である。また、BAと林冠高では対応する地形スケール(起伏量を評価する空間面積)が異なることも示された。これらの結果は、現地調査から得られたBAのみによる地上部のバイオマス量の推定の不確実性を意味する。今後はさらなる現地調査を行い、急峻な地形における森林構造を把握するためのLiDARの有効性の検討を進めるとともに、森林の3次元構造に及ぼす地形の影響について様々なスケールで検討することが必要であると考えられる。