| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-057

富士北麓野尻草原の遷移過程における空間パターン変化

*安田泰輔,中野隆志,杉田幹夫(山梨県環境科学研究所),中山智絵,齋藤 彩,若林 遼,堀 良通(茨城大・理)

人為的管理が行われなくなった半自然草地では、一般的に低木や高木の進入により遷移が進行し、草原性の植物群落から森林性の植物群落へと変化する。本研究では富士山北西麓に位置する野尻草原においてこれまで研究を行った結果、このような遷移の傾向があったものの、あまり樹木の進入していない草本群落部分では野生動物(ニホンシカ)の攪乱によって、草原部分の種多様性が維持もしくは増加することが示された。このことは人為的管理がほとんど行われないような粗放的状況の半自然草地であっても高い種多様性が維持できる可能性を示唆する。

しかし、一方で強度の攪乱は種多様性を減少させることも知られている。そのため、低木あるいは高木種の進入はこのシカと草本群落の関係を変化させるかもしれない。野外観察の結果、草原内のシカの移動路(獣道)は草本群落に集中しており、低木や高木種が侵入すると移動が制限されるため、シカの移動路はより草本群落に集中し、局所的に強度の攪乱が生じる可能性がある。つまり、遷移の進行によって、シカの攪乱は逆に草本群落の種多様性を減少させるかもしれない。

本研究では、樹木の進入割合が異なる5つの群落を対象として、単位面積当たりの草本群落種数とシカの攪乱の指標としての土壌硬度、群落高に着目し、これらの空間パターンを解析することで上記の仮説が支持されるかどうかを検討した。


日本生態学会