| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-062
近年、世界的な両生類の減少が警告されているが、日本在来のカエル類のほとんどは水田地域を主な生息環境としており、これらの環境の変化が本種群の減少や絶滅を引き起こしていることが問題となっている。圃場整備とカエル類の関係を考察した既存の研究はあるが、地域スケールでカエル群集を対象にしたものは少ない。そこで本研究では、立地環境の異なる水田地域においてカエル群集の構造を把握し、これと土地利用や管理形態との関係を解明することから、本群集の保全策について検討することを目的とした。
本研究では長野県上伊那地方における中山間地と市街地において基盤整備の有無が異なる5つの水田地域を選定した。各々500m直径円内の水田に隣接し、かつその地域の特徴となる土地利用形態が含まれるような約2kmのルートを設け、2010年8月に現地踏査を行った。ルート上を一定の速度で歩き、畦畔および水田内で確認された個体を地図上にプロットし、種名と発見場所、行動内容を記録した。現地踏査は時間的な行動特性を配慮し、朝および昼、夜の3時間帯に分けて計35回実施した。
調査地域全体ではニホンアマガエルおよびヤマアカガエル、トノサマガエル、ダルマガエルの4種が出現した。中山間地・未整備地のA地区では8個体、同じB地区では127個体、中山間地・整備のC地区では108個体、市街地・未整備のD地区で918個体、市街地・整備のE地区で615個体が出現、確認された。ニホンアマガエルは全調査地域で確認されたが、ヤマアカガエルは中山間地・未整備のA・B地区でのみ確認された。ダルマガエルとトノサマガエルについては、各々が市街地・未整備のD地区と市街地・整備のE地区に集中して生息しており、全地域の出現個体数の約9割を占めていた。発表では水田管理状況や土地利用との関係についても考察する。