| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-063
近年、生物多様性国家戦略2010でも水田の生物多様性保全が謳われるようになった。水田は生産の場として維持管理されてきた二次的自然であるが、淡水湿地を生息地とする生物種にとっては貴重な立地環境である。しかし現在、水田に生息する水生昆虫ではタガメやゲンゴロウ等が環境省版レッドリストで絶滅危惧種や希少種に指定されるまでに減少しており、水田地域における水生昆虫群集の保全策を図ることが重要な課題となっている。そこで本研究では比較的良好な環境が残存している長野県上伊那地方の異なる立地条件を有する水田地域において、水生昆虫群集と立地環境条件との関係を解明し、これらの具体的な保全策を検討することを目的とした。立地環境条件としては市街地と中山間地において、各々基盤整備済と未整備の5つの水田地域を選抜した。各調査地域は特徴的な土地利用を含むように配慮した500m直径円内とした。水生昆虫の捕獲調査は2010年7月~8月にかけて各20地点において掬い取り法で実施した。同時に土地利用調査および聞き取り調査を実施した。
その結果、中山間地ではユスリカ科やカ科がより多く出現し、市街地でのみマルミズムシ科が分布した。未整備水田では蜻蛉目や半翅目のマツモムシ(Notonecta triguttata)やコオイムシ(Appasus japonicus)がより多く出現した。加えて、中山間地未整備地域でのみ毛翅目が出現し、一方、その内の山室でクロズマメゲンゴロウ(Agabus conspicuus)とミズカマキリ(Rnatra chinensis)、また小屋敷ではコシマゲンゴロウ(Hydaticus grammicus)とクロゲンゴロウ(Cybister brevis)が分布した。