| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-067
外来種の管理戦略を決定する上で、時空間的なリスクを評価することが重要な課題のひとつとされている。生息適地モデルは外来種がまだ侵入していない潜在的な生息可能地域を明確化し管理の重点地域を明示できるため、侵略可能性のリスクを評価するツールとして利用されている。外来種の場合、侵入地では原産地と異なる環境にも分布を拡大することが知られているため、原産地と侵入地両方の分布情報を利用することで生息適地の推定精度は向上する。
両生類の感染症であるカエルツボカビは1998年に確認された新種の真菌類であり、世界的な両生類の激減に関わる要因のひとつに挙げられている。特に被害の大きい中南米を中心に、世界中のカエルツボカビの分布情報を用いた生息適地の解明が進められてきた。一方で日本のカエルツボカビは外国よりも遺伝的多様性が高く、在来の両生類は抵抗性を持っているため、本菌は日本では在来種である可能性が高い。そこで、原産地である日本と侵入地である外国の分布情報を用いてカエルツボカビの生息適地を明らかにし、より精度の高いカエルツボカビの空間的侵入リスクを評価した。
在データとして原産地日本でカエルツボカビが確認された40地点、侵入地外国で確認された187地点の計227地点を使用し、環境要因として5kmメッシュの最高月平均気温、最低月平均気温、最大月降水量、最小月降水量、気温の変動係数、降水量の変動係数を用いた。そしてspatial filterを利用して空間的自己相関を考慮したニッチモデルをMaxEntで解析した。
発表では本研究と既存研究で推定された生息適地と分布制限要因を比較し議論する。