| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-068

広島県北西部におけるニホンザルによる農作物被害の変遷

*渡辺麻気(広島大・院・国際協力), 山崎亙(広島大・院・国際協力),中越信和(広島大・院・国際協力)

近年、山村集落での獣害が顕在化し、全国で大きな問題となっている。その原因として、1960年代以降の急激なエネルギー転換や肥料革命による農村のありかたの大幅な変化がある。農村から都市への多くの人の移動や高齢化が起こり、農地・草地や森林などの里地里山の維持管理が難しくなり、野生動物が人間の生活圏に入り込みやすい事が農作物被害の深刻化もたらしたと考えられる。高齢化した農村では農作物被害対策が困難となり、これが被害を助長している大きな要因と考えられる。ニホンザルなどによる農作物被害は増加する一方で、実現可能な対策が未だ確立されていない。対策が確立されていない原因の一つは、例えばニホンザルの被害にあっている場所は対策が進むのに対し、被害に全くあっていない場所は野生動物に対して無防備である現状がある。農作物の摂取が繁殖開始年齢や幼獣の死亡率の低下等、個体数の増加率が増大し分布が拡大していることから考えても、新たに被害が起こるであろう地域の予測は重要である。ニホンザルが新たに農業被害を起こす場所が予測できれば、獣害が深刻化する前に対策を講じることができるからである。このことを踏まえ、本研究ではニホンザルの被害状況の年次変化を明らかにすることを目的とした。研究対象地は、広島県北西部地域とし、調査方法は、地域住民への口頭アンケートで行った。アンケート内容は、1)ニホンザルの農業被害に関しいつから出没するようになったか、2)出没しなくなった地域は、いつから出没しなくなったかを尋ねた。その結果、地域ごとにニホンザルの出現の頻度が数年の期間で変化することが明らかとなり、さらにその地域は山間部から都市部へと変化していることが認められ、ニホンザルの移動には、人口密度や作付面積にそれぞれ相関が有り、当地のニホンザルは人間生活圏への食糧依存を高めていることが示唆された。


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