| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-071
近年,水田地域は絶滅危惧種を含む多様な植物種の生育地として高く評価されるようになり,多様性保全に向けた研究も進みつつあるが,水田地域における植物多様性を地域スケールで捉えた研究は少なく,その成立要因を解明し,景観レベルで保全管理手法を検討することが求められる.そこで本研究では,立地条件の異なる水田地域において植物相および群落の構造を把握し,土地利用や管理形態との関係性を地域スケールで解明することを目的とした.
調査地は,長野県上伊那地方の4タイプ9つの水田地域(中山間・未整備地域:A,B,C/中山間・整備地域:D,E/市街・未整備地域:F,G/市街・整備地域:H,I)で各面積は約20haである.植物相調査は2009年および2010年の5月から11月にかけて毎月実施し,各地域の水田や畦畔,法面など各景観要素に出現する全植物種の被度等を記録した.植生調査は2010年8月にAおよびB,D,F,Hの5地域において25mメッシュを設定し,その交点における水田と畦畔,法面,休耕・放棄地,路傍の群落について各方形区1㎡を対象に出現種の被度と群度,草丈を記録した.環境条件としては各地域の土地利用を踏査により記録した.
その結果,植物相調査では中山間・未整備地域のAで335種,同Bで310種,同Cで340種,中山間・整備地域のDで256種,同Eで290種,市街・未整備地域のFで304種,同Gで253種,市街・整備地域のHで245種,同Iで230種が確認され,未整備地域で出現種数が多かった.このような植物相の地域差には,畦畔や法面の土地利用面積割合が大きく関係していることが指摘された.植生調査では,全地域で471地点の植生資料を得た.大会当日では,各地域の植物多様性を群落数や多様度指数,種数-面積といった観点から評価し,地域スケールで多様性が高く維持される土地利用パターンを考察する.