| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-073

ナラ枯れの拡大に影響を与える植生とは

*今廣佐和子(東北大・生命),斉藤正一(山形県森林研究研修センター),中静透(東北大・生命)

落葉ナラ類(コナラ・ミズナラなど)や常緑のカシ類(アラカシ・アカガシなど)に発生している集団枯死のことを総称して「ナラ枯れ」と呼び、被害拡大対策が急務となっている。そこで本研究では、①ナラ枯れの拡大に影響する土地利用がどのようなものかを明らかにすること②ナラ枯れに対しての森林の脆弱性予測を行うことで、ナラ枯れの被害拡大を抑制できる森林管理の提案を目的とする。

①ナラ枯れの拡大に影響する土地利用とは

ナラ枯れのような病害虫による被害拡大は、景観の多様性による影響を受けていること考えられる。ここでは、ナラ周辺の局所~景観スケールでの森林組成・土地利用を調べ、ナラの枯れやすさに影響する土地利用がどのようなものかを求めた。結果、10mほどの局地的スケールでは、ナラ類の単一林は避け、ナラ類以外の樹種も混生させることが望ましく、景観レベルではナラ類の森林を広く連続させずできるだけ分断化させることがのぞましいということが明らかとなった。

②ナラ枯れに対する広葉樹二次林の脆弱性予測

ナラ枯れによる森林の危機を防止するためには、防除だけでなく、ナラ枯れに対してどのような二次林が脆弱なのかを見極める必要がある。そこでナラ枯れが侵入する前の植生をみることで、ナラ枯れに対する二次林の脆弱性を予測した。結果、かつて薪炭林利用が集約的に行われていた森林で,林内の高木の実生や稚樹が減少してしまった後で管理が放棄され,ササ類が林床に優占した森林では、林冠部のミズナラの優占度が高く,かつ林床にササが繁茂して実生や稚樹による天然更新が困難と考えられ,こうした森林はナラ枯れに対する抵抗性も、ナラ枯れが侵入した後の回復性も低く,ナラ枯れに対して脆弱な森林であるといえる。


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