| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-096
ブナ科樹木の結実量には大きな年変動があり、その豊凶は堅果類を利用するクマなどの野生動物の行動に影響を及ぼすと考えられている。その影響の大きさは、結実変動パターンやその同調性の違いにより樹種間で異なることが予想されるが、これらはブナ以外の樹種ではあまりよくわかっていない。そこで本研究では、福井県で実施しているブナ科樹木の豊凶モニタリング調査によって得られたデータにもとづいて、ブナ科樹木3種の結実変動パターンとその同調性を比較した。
調査は2005年から2010年に、ブナ、ミズナラ、コナラの3樹種を対象として実施した。これら3樹種が優占する地域を中心に調査地点を設定し、各地点10~25本の個体ごとの結実状況を、枝先50 cmあたりの平均着果数(以下、着果指数)で評価した。今回は、このうち4年以上連続して調査し、かつ不作以上の結実年があった個体のみを対象として解析を行った。
着果指数の変動係数はブナが最も大きく、次いでミズナラ、コナラの順となった。隔年結果傾向もブナが最も強く、次いでミズナラ、コナラの順となった。着果指数の年変動は、ブナでは地点内、地点間ともに、個体間に強い正の相関が検出された。ミズナラでは地点内では強い正の相関が検出されたが、異なる地点の個体間では中程度~強い正の相関がみられた。コナラでは地点内ではほとんど相関なし~強い正の相関がみられたが、異なる地点の個体間ではほとんど相関なし~弱い正の相関であった。
ブナとミズナラでは、大部分の個体が同調して結実不良になった年があったが、コナラにはみられなかった。これは樹種間における結実変動パターンの同調性の違いを反映したものと考えられた。また福井県ではブナ、ミズナラが揃って結実不良となった年にクマ大量出没が発生したことから、これら2樹種の結実変動の影響は、クマの行動を左右するほど大きいことが推察された。