| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-098

栃木県日光市の林木遺伝資源モニタリング試験地におけるミズナラ落下堅果の粒数とサイズの季節変化

*大谷雅人(森林総研林育セ), 篠﨑夕子(森林総研林育セ), 岩泉正和(森林総研林育セ), 矢野慶介(森林総研林育セ), 平岡宏一(森林総研林育セ), 宮本尚子(森林総研林育セ), 高橋誠(森林総研林育セ)

冷温帯林の主要構成樹種であり,家具材や建築材などとして価値が高いミズナラは,林木遺伝資源として重要な有用広葉樹である。本種の結実の豊凶を左右する要因は着花量の変動ではなく,雌花が堅果に発達する過程での未熟落果にあると考えられているが,その動態と背後にある生態的要因については未解明な点が多い。本発表では,開花期から成熟堅果の散布が終了するまでの雌繁殖器官の落下動態を詳細に把握することを目的とした。

2010年4月下旬に,栃木県日光市のミズナラ天然林内の固定試験地(120 m × 140 m)に24個のシードトラップ(面積0.5 m2)を設置した。5月下旬に試験地内の胸高直径5 cm以上のミズナラ成木403個体を対象に着花量の調査を行い,雌繁殖器官の落下が観察されなくなった11月中旬まで,2~3週間おきにトラップの内容物を回収した。

調査期間中に落下した雌繁殖器官の数は177.4±131.8個/m2(平均±標準偏差;うち雌花および未熟堅果123.1±86.1個/m2)であり,既往研究との比較からやや豊作に相当すると推測された。8月下旬までに落下した雌繁殖器官のほとんどは直径3 mm以下の雌花または未熟堅果であり,個数も6月以降減少傾向にあったが,9月上旬からは再び増加傾向に転じ,殻斗から堅果本体が露出した,より成長の進んだ堅果が多くを占めるようになった。今後,立木密度と落下堅果量との関係や食害の有無などについて解析し報告する予定である。


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