| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-112

海岸クロマツ林に侵入・定着したコナラの個体群動態

*船田涼子(新潟大院・自然科学),箕口秀夫(新潟大・自然科学系)

東北から北陸地方の日本海沿岸では、古くから冬の飛砂防止・防風を目的としてクロマツ(Pinus thunbergii)を主体とした海岸林が造成されてきた。しかし、管理放棄やマツノザイセンチュウによるマツ枯れ被害が発生したことによる広葉樹の侵入定着がみられ、植生遷移が進行している。本研究では、クロマツ海岸林内に侵入しているコナラの個体群動態を把握することにより、海岸林におけるコナラの更新メカニズムを明らかにすることを目的とした。調査地はコナラの種子源とされる近隣にある山側から最も汀線の近くに定着していたコナラまで、長さ145m×幅25mの帯状ラインを設置しておこなった。2002年と2009年の毎木調査、2010年の当年生実生調査、植生調査、光環境調査、土壌調査および野ネズミの個体群密度を調査した。一般化線形モデルを用いて、当年生実生の生残要因、7年間の侵入と消失における環境要因および野ネズミの生息場所選択についての解析を行った。その結果、コナラの実生が侵入定着において、当年生実生の段階と1年生実生以降の段階で生残を左右する環境要因が異なっていた。当年生実生段階では発芽場所に野ネズミにより貯蔵された堅果数が少ないほど生残しやすく、土壌含水率が低い場所では生残しにくい。それに対し、1年生以降の実生では光環境が十分あることが必要であった。また、野ネズミの生息場所選択が展葉期と落葉期では異なっていた。そのため、展葉期に生息していた個体によって貯蔵された堅果が、落葉期に野ネズミが生息場所を変えたことによって、捕食から回避される可能性が示唆された。発芽及び成長に適した環境に貯蔵された堅果は実生定着を可能にする。今後、海岸林クロマツ林では、コナラは林分構造を発達させ、汀線に向かって段階的に分布域を拡大させると考えられる。


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