| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-114

侵入段階の異なる湿原植物2種の光・水応答特性

*江川知花, 露崎史朗 (北大・環境科学院)

泥炭採掘後の遷移初期では、直射により土壌が乾燥した状態となるが、初期定着種の植被下では光・水条件が改善され実生定着が促進されることがある。光・水の変化とその相互作用に対する応答は、植物種によって大きく異なり、初期定着種の植被の作用も各種の応答に応じて変化する。そこで、本研究では、1)個々の種の光・水変化とその相互作用への応答は、遷移における各種の定着段階とどのように関連しているか、2)初期定着種の植被は、後続の実生定着に対しどのように作用し、遷移に寄与するのか、を野外操作実験により検証した。

北海道サロベツ湿原泥炭採掘跡地内の裸地において、地表面を5cm盛り上げた乾燥区、5cm掘り下げた湿潤区、土地改変を行わない対照区を設置し、初期定着種ミカヅキグサとそれに次ぎ侵入するヌマガヤの播種実験を行った。さらに各実験区の半数でミカヅキグサ植被を模した60%遮光処理を行い、2種の実生の当年成長量と資源分配比を比較した。

ミカヅキグサ、ヌマガヤは、ともに地上部・地下部資源分配比の可塑性は低かった。しかし、ミカヅキグサは処理間で成長量に差がなかったのに対し、ヌマガヤは遮光がなければ土壌水分の減少とともに成長量が低下し、2種間で違いが見られた。一方遮光処理を行うと、ヌマガヤは乾燥区において成長量を増加させた。ミカヅキグサは、地上部形態を遮光処理によってのみ変化させたが、ヌマガヤの地上部形態は、遮光処理のみならず、土壌水分によっても変化した。以上より、1)ヌマガヤは、ミカヅキグサと比較して水分減少に敏感であり、乾燥の生じやすい裸地での定着が困難であること、2)ヌマガヤは乾燥条件下では特に光変化の影響を受けやすいこと、3)ミカヅキグサによる植被は、湿潤条件ではヌマガヤの定着に作用しないが、乾燥条件下では正に作用し、遷移の進行に寄与することが示唆された。


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