| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-115
日本海側多雪地のスギ成熟林においてスギの実生由来の稚樹が根株や倒枯死木の基質に分布が偏っていることが報告されている。そのため定着初期段階における林床の特定の基質へ強い依存性が実生更新を制限している可能性が考えられる。そこで本研究ではスギの発芽から定着までの個体群動態に与える基質の影響を評価することを目的とした。
佐渡島大佐渡山地にある新潟大学演習林のスギ成熟林分において、2009年に出現した当年生実生の生残を2010年秋まで追跡調査した。また2009年秋から、林冠2タイプ(スギ、広葉樹)、基質4タイプ(リター、鉱質土壌、倒枯死木、根株)の組み合わせによる野外発芽試験を行った。また調査地区内に設置したシードトラップにより2005年から2009年までの種子量を調査した。
08年の落下健全種子密度に対し09年の当年生実生の出現密度は128個体/haで、推定の発芽率は0.07%であった。また09年の当年生実生の出現密度に対し010年秋まで生残した実生密度は7個体/haで生残率は0.05%であり、生残した基質は根株と倒枯死木が多かった。野外発芽試験の結果から、発芽率(%)は広葉樹林冠-鉱質土壌区で最も高く2.33±8.16(中央値±標準偏差)、逆にスギ林冠-リター区ではほとんど発芽しなかった。生残率(%)はスギ林冠-根株区で最も高く14.29±13.26(中央値±標準偏差)であった。
以上の結果から、佐渡島スギ成熟林では各基質とも種子散布から発芽までの死亡率が極端に高く、実生更新の大きなボトルネックになっていることが明らかになった。その中で根株や倒枯死木の生残率は他の基質に比べ高く、実生更新のセーフサイトであると考えられる。