| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-127
南米アマゾン川流域の熱帯林の炭素蓄積量や生産力については、伐倒調査による現存量の推定事例とともに、それらの事例研究に基づく広域推定や地域間比較といったレビューなど、これまでに多数報告されている。しかし、こうした事例研究の大半は、地上部のみを対象としており、東南アジアなど他地域の熱帯林と同様、根も含めて現存量を推定した例は未だに限られている。とくに、生態系全体の炭素蓄積の多くを占めるであろう大径木について、その粗根量を実測した例は、アマゾンの場合ほとんど皆無ではないかと思われる。以上の背景から、本研究では、中央アマゾンの冠水しない台地状に典型的にみられる熱帯降雨林(テラ・フィルメ林)を対象に、大径木も含めて伐倒・伐根調査を行い、地下部を含めた現存量の推定を行った。
調査地は、ネグロ川上流、ほぼ赤道直下にあたるSao Gabriel周辺で、毎木用に設置した固定プロット(0.25 ha)で、2ヶ所の方形枠(各20m x 20m)を対象にその中の全個体(直径10cm以上)を伐倒伐根し、幹や枝、葉、粗根など器官別の乾重を求めた。伐倒木のうち、最大樹高は約29 mであった。また、各個体の伐根時には、根系の広がり(2方向)や深さ(主根長)を測定し、支柱根や板根の有無など形態的な特徴も観察、記載した。
今回の発表では、おもに根の現存量の推定結果とその配分(地上/地下部比)の特徴について、アマゾン流域や他地域での既報値と比較しながら検討する。さらに、根系の空間分布については、樹冠と根系の広がり(投影面積)の関係など、幾つか解析結果を踏まえて、特徴やその意義について考察する。