| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-130
気象要因の年々変動に伴って,生態系の炭素固定能(純一次生産などの炭素吸収量と土壌呼吸などの炭素放出量)は変動すると考えられる.炭素吸収の指標としてLAI(葉面積指数)はNPP推定の指標として有効であることが知られているため,本研究は純一次生産(NPP)推定に資することを目的に,全天写真法を用いてススキ草原の葉群動態を2005年からモニタリングしてきた.調査対象は,筑波大学菅平高原実験センター(長野県上田市)の半自然ススキ草原であり,この草原は毎年10月中旬の草刈りと刈り取られた地上部の持ち出しによって維持されてきた.この地域では例年,冬期には約1 mの積雪があり,3月中旬から下旬に雪融けが始まり,その後1カ月以内に草原の雪はほぼ融け終わる.冬期の積雪量と雪融けの早晩(春期の地温と土壌水分に影響),ならびに梅雨期から夏期にかけての気象条件(日射量と土壌水分に影響)は,草原植物の生育開始期・最盛期や葉群動態に影響を持つと考えられる.草原植物の生育期間中に,自動魚眼デジタルカメラを用いて葉群の全天写真画像を定点で毎日撮影し,解析に適した曇天時などの画像から開空率に基づいてLAIを算出した.また,LAI推定手法の検証のため,他に,直接法(サンプリング法),LAI測定器を用いた方法(LAI-2000法),および透過光の波長比率(PARとNIR)による手法に基づいて,結果を比較した.本発表では,これらの成果と問題点を紹介する.