| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-140
河川中流域の河畔域では、しばしば山地森林に匹敵する生産量を持つ植物群落が成立し、多くのリターが供給され、(第48回日本生態学会大会)、それらが緩やかに分解されていく(第52回日本生態学会大会)。そして河畔域に貯留されたリターは、ひとたび大規模な出水がおきると下流へ流出すると予想される。そこで本研究では、河川中流域からの潜在的なリター流出量を推定するとともに、河川の出水パターンが流出量に与える影響を明らかにする目的で、植物群落から河川へのリター流出モデルを作成し、10年間の有機物動態についてシミュレーションを行った。
モデルでは、毎年起きる小規模出水によって林床から河川水中へのリターの移動が起こり、数年に一度生じる大規模出水によって、群落周辺(林床と水中)に貯留されていたリターが全て下流域へ流出するというパターンを想定した。出水の規模と頻度の違いを考慮し、西日本の河川中流域における代表的な河畔植生であるネコヤナギ(Salix gracilistyla)群落を対象としてシミュレーションを行った。その結果、小規模出水の規模の違いは潜在的リター流出量には大きく寄与しない一方、大規模出水の頻度によっては、下流への潜在的リター流出量が毎秋のリター供給量の15‒80%の間で変動することが明らかになった。以上のことから、河川中流域の植物群落が下流域への潜在的な有機物供給源となりえる可能性を持つと同時に、下流へのリター流出量は大規模増水の頻度によって大きく異なることが示された。