| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-141
寒冷地において、土壌は低温に晒されることで凍結する。また、粒子の大きさによって土壌の凍りやすさは異なる。局所的に粒径の異なる土壌が存在することで凍結に伴う膨張程度の違いが生まれ、その結果、土壌が移動する事が知られている。
本研究ではスウェーデン北部の山岳ツンドラ生態系において、低温により引き起こされる土壌の移動が、植物群集に与える影響について調べた。同生態系において土壌は0.17~0.71cm year-1の速さで放射状に移動していた。放射状に動く土壌の中心からの距離が増加するに従って、コケ植物から維管束植物へ優占植物のタイプは変化した。中心からの距離と植物群集の多様度には顕著な関係は見られなかった一方で、単位面積当たりの炭素蓄積量は中心からの距離の増加に伴って著しく増加した。
これらの結果から、土壌の凍結融解が生み出す土壌の移動は、撹乱要因としてツンドラ生態系における植物群集の局所的な炭素蓄積量の勾配を作り出す要因となっている事が示唆された。