| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-165
集水域の経済活動の増加に伴う窒素負荷の増加は、河川や湖沼の富栄養化、地下水の硝酸汚染を引き起こす要因となっている。河川水中の溶存無機態窒素は、硝酸態窒素が成分の大部分を占め、一次生産者の主要な栄養素の一つになっている。硝酸態窒素の増加は、直接、間接的に水域生態系への影響が大きく、生態系保全を考える上でも、流域からの窒素負荷量推定の精度向上は今後ますます重要となる。窒素負荷量や窒素負荷源の推定には様々なモデルが考案されてきているが、窒素安定同位体比も有用なツールになる可能性がある。窒素化合物に含まれる窒素には、安定同位体が含まれており、由来によってその組成が異なる。例えば、下水処理水や家畜屎尿由来の窒素安定同位体比では10~20‰、化学合成肥料などの大気由来では0‰程度の値を示すことが知られている。河川水中の硝酸態窒素は、森林からの溶出、農地での施肥、市街地からの下水排出など様々なプロセスが関わっており、硝酸態窒素の安定同位体比もこれらのプロセスを反映した値を示すことが予想される。本研究では、愛知県東部に位置する豊川を対象にし、豊川主流の上流から下流の14地点の硝酸態窒素の窒素安定同位体比と集水域の土地利用変化について調べた。豊川の集水域は、80%以上が森林で占められていたが、下流ほど農地、市街地の面積が増加していた。硝酸態窒素濃度は、0.2~1.4 mgN/Lの範囲で下流ほど上昇しており、その窒素安定同位体比は、3.8~9.2‰の範囲で、下流ほど上昇していた。硝酸態窒素の濃度と窒素安定同位体比は、人為由来物質の増加に伴い上昇していた。