| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-196

多雪地冷温帯林の異なる林分における野ネズミ個体群の季節変動

*松本幸二(新潟大院・自然研),箕口秀夫(新潟大学・自然科学系)

多雪地冷温帯林にはヒメネズミ,アカネズミおよびヤチネズミが同所的に生息している。しかし,3種は異なる外部形態や行動特性を有し,相観スケールでは各種の出現場所や出現数に違いがあることが報告されている。2008,2009年に行った相観スケールでの野ネズミ捕獲調査においては,林分ごとで異なる年次変動となり,3種それぞれ特定の林分を好んで利用する傾向がみられた。本報告では,2010年の調査を含めた3年間のデータを用いて,異なる林分における野ネズミ群集の季節変動を明らかにする。

調査は山形県小国町温身平の冷温帯林で行った。本調査地は最深積雪深が2.5mに達する多雪地である。調査地にはブナ林の他,立地に応じてヤチダモ,サワグルミおよびドロノキがそれぞれ優占する林分がみられる。これら4林分に雪崩植生下部に発達している矮性低木林を加えた,5林分に調査プロットを設置した。調査プロットは各林分に5カ所,計25ヵ所設置した。各調査プロットには野ネズミ生け捕りワナを5個ずつ,十字に10m間隔で設置し,連続4晩の記号放逐法で調査を行った。調査は2008年には7~11月に,2009年と2010年には6~11月に行った。

各林分における野ネズミの3年間延べ捕獲個体数から,ヒメネズミはドロノキ林,アカネズミはヤチダモ林およびヤチネズミはサワグルミ林を最もよく利用していた(Kruskal-Wallis test,P<0.001)。季節変動を明確にするため6,7月を春,8,9月を夏,10,11月を秋とし季節ごとの個体数に着目すると,ヒメネズミはドロノキ林で,アカネズミはブナ林と矮性低木林で,そしてヤチネズミはサワグルミ林で季節変動が確認された。以上のことから,野ネズミ群集には林分選好性があり,林分の違いによって異なる季節変動を示すことが明らかとなった。


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