| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-199

静岡県浜松市における放棄養鰻池の湿性遷移に伴う水質特性と水生甲虫群集

*田島文忠(千葉シャープゲンゴロウモドキ保全研究会),北野忠,藤吉正明,西山和寿,栗原透(東海大・教養)

静岡県浜松市は、ウナギの生産地として有名であり、市内には多くの養鰻池が存在している。しかし、近年の鰻養殖業の衰退により、多くの養鰻池が管理放棄されつつある。全国的に水辺環境の消失や悪化が懸念されている中、これらの放棄養鰻池の中には、多様な植生や水生動物相が確認されるなど、結果的に水生生物の貴重な生息環境となっているところも見られる。そこで本研究では、市内に点在する放棄養鰻池に着目し、放棄年数と湿生遷移、水質および水生甲虫相の関係について調査・解析を行った。

遷移段階が異なる10池、現在も養鰻中の2池の計12池を調査地点とし、水質および水生甲虫相の調査を、2007年度に各季1回ずつ計4回実施した。植生調査は、2007年9月に実施した。各池の放棄年数は、過去の空中写真の判読により推定した。

調査の結果、各池の特徴として、放棄年数と遷移段階、植生被度には高い相関関係が認められた。水質結果について、主成分分析を行った結果、溶存塩類濃度および全窒素、全リンの富栄養化項目の2軸に集約された。調査地の水質特性として、地下水の塩水化の影響が池によって異なることと、放棄年数の経過に伴う富栄養化の進行が挙げられた。

水生甲虫についてみてみると、現在も養鰻中の池ではチャイロチビゲンゴロウがみられ、遷移初期の池ではチビゲンゴロウ、ツブゲンゴロウ、ムツボシツヤコツブゲンゴロウなど、遷移後期の池ではコツブゲンゴロウなどが確認された。非計量多次元尺度法により序列化を行ったところ、湿生遷移の進行に伴い水生甲虫相が変化することが示された。

これらの結果から、水生甲虫各種には生息環境として好適な遷移段階があると考えられた。また、養鰻池の放棄年数の経過に伴い植生遷移と富栄養化が進行し、その環境の変化にともなって水生甲虫相が変化しているものと推察された。


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