| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-206

都市近郊における蝶類の生活史と入れ子構造の関係

*曽我昌史,小池伸介

生息地が分断した景観では、生物群集の分布が入れ子構造(Nested structure)を形成する場合があり、入れ子順位は種の絶滅確率の指標となることが知られる。そのため、各種の入れ子順位と生活史特性の関係が明らかとなれば、生息地の分断化による絶滅確率の高い種を予測することが可能となり、それらの種の効率的な保全・管理に結びつく。そこで本研究では、東京都多摩地域において蝶類を対象に、各蝶類種の入れ子順位と生活史特性の関係を明らかにすることを目的とした。

調査は東京都多摩地域(10×15km)における20の森林(1.1ha~122ha)で行った。蝶類の調査はトランセクト法(4~10月)を用いた。生活史特性には、①食性タイプ、②食性幅、③年世代数、④マトリクスにおける食草・食樹の人為的利用の有無、の4つを用いた。また、入れ子解析にはBINMATNESTを用いた。

解析の結果、確認された蝶類53種は有意に入れ子構造を示した(T=25.47, p<0.0001)。一般化線形モデルを用いて生活史と入れ子順位の関係を解析した結果、食性タイプが草本、食性幅が広い、年世代数が3化以上、食草・食樹が人為的に利用されている種は絶滅確率が低いことが明らかとなった。特に、食草・食樹の人為的な利用の有無は最も影響の強い要因であった。以上の結果から、本調査地のような都市近郊の蝶類の場合、複数の生活史特性を指標として用いることで各種の絶滅確率の予測が可能であること、それらの種の保全を考えた場合には、分断化した生息地とマトリクスを併せたランドスケープレベルでの生息地管理が望まれることが示唆された。


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