| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-211
佐渡島で放鳥されたトキが野生復帰していくためには、採餌環境の整備が必須であるが、その際に、トキが利用可能な環境の特性の情報とともに、季節ごとの採餌利用環境とそこでの採餌内容などの採餌生態を把握し、さらに採餌効率の高い環境の特性の情報をフィードバックして、採餌適地を確保していくことが重要である。
本研究では、採餌における季節ごとの利用環境、餌生物の内訳、獲得頻度を把握するために、放鳥されたトキの採餌行動を観察し、採餌場所、探索時間、歩行速度、採餌速度、採餌内容を記録した。トキは主に水田地帯を採餌場所として利用しているが、季節的に利用する環境と餌生物の割合は異なっていた。これは、農作業や水田の稲の成長による環境の変化により、水田を利用できない時期があることや餌生物量の季節変動によるものと推測された。また、直接観察には限界があるものの、ドジョウやカエル以外にも、ミミズや水生・陸生無脊椎動物の利用も多くみられた。さらにそれぞれの環境あるいは餌生物によって探索方法も異なっていたことから、採餌効率の高い環境を考慮する際に、餌生物の探しやすさという視点が重要であることも示唆された。
各季節において、採餌行動のパターンを明らかにし、また採餌内容ごとに、利用頻度と採餌速度の高い環境の関連を検討し、水田地帯を採餌場所とするトキにとって、どのような水田管理のあり方が望ましく、どのような採餌場所を創出することが効果的なのか考えてみたい。