| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-219
生態群集の空間的広がりの構造,その形成プロセスに関する研究が近年盛んに行われている.局所群集はその空間的配置や環境の異質性の状況により,周辺からの移入のような地域的プロセスや局所的な環境条件のような局所的プロセスの種多様性や種組成に対する影響の大きさが変化することが知られている.
河川は上流ほど枝分かれし、下流ほど収束するという樹状の生息地が形成される.このような生息地において,水生昆虫全体では上流では局所的プロセスが,下流では地域的プロセスの影響が大きいことが指摘されている.しかし,河川は上流-下流で生息地の形状が異なるだけでなく,生産性の偏りも同時に生じる.一次消費者の水生昆虫にとって上流ではリターが,下流では付着藻類が主要な餌資源となる.このような資源分布によって,資源の質や利用様式が異なる摂食機能群のメタ群集構造は異なっていることが予想される.
そこで本研究では,水系網における摂食機能群別のメタ群集構造の違いを明らかにすることを目的とした.調査は関東平野南部を流れる多摩川中流域の支流域から本流において行った.種多様性の分布パターン,調査地点間の距離と種組成の類似度の関係,局所的プロセスと地域的プロセスの相対的重要性についての上流-下流の変異性を摂食機能群別に比較し,異なるメタ群集構造が生じるか検討した.