| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-252
ウミネコにおける年齢と繁殖成功の関係
*新妻靖章,富田直樹,風間健太郎(名城大学農学部)
ウミネコは,日本列島の沿岸部を中心に繁殖するカモメ類であり,もっとも身近な海鳥である.これまで,ウミネコの生態についての研究は北海道天売島や利尻島の繁殖地にて実施され,クラッチ・サイズの制限要因,攻撃性といった行動の個体差,海洋環境の変動に対する繁殖応答機構などが明らかにされてきた.しかし,解析において年齢については全く考慮されてこなかった.これは両個体群の年齢が分からないという決定的な原因による.本州の北端部に位置する八戸市の蕪島は,これまで毎年2,000羽程度の雛に脚環が付けられており,個体群中の10−20%の年齢が明らかである.そこで本研究では,年齢毎のウミネコの繁殖特性について調べた.初卵産卵日については,雌雄とも年齢とともに早くなり,ある程度の年齢を超えると遅くなった.クラッチ・サイズについては,メスについては年齢とともに大きくなったが,ある程度の年齢を超えると小さくなった.オスについては年齢とともに大きくなった.また,巣立ち雛数については,オスについて齢とともに大きくなり,ある程度の年齢を超えると小さくなった.メスについては,オスのような変化は認められなかった.卵産生のエネルギー・コストが大きいため,メスでのみ老化現象があるのかもしれない.雛への給餌はメスよりもオスにおいて,餌条件が悪い時のみより大きな割合を示すことが知られている.そのため,オスについてのみ老化現象が現れたれたのかもしれない.