| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-257

フトヘナタリの底質選好性―野外分布パターンと加入・成長実験による検証

*大田直友,河井崇(阿南高専・建設システム工/地域連携テクノセンター)

フトヘナタリは東アジアの干潟上部~中部にかけて生息する巻き貝(<45mm)であるが,日本では戦後40%もの干潟が失われたため生息地は激減し,準絶滅危惧種(環境省)となっている.一方で,環境省(2007)の調査によると日本の代表的な干潟157カ所のうち69カ所で見つかっており,絶滅が危惧されている割には出現頻度が高い.彼らは,砂利の混じる砂礫の干潟から,サラサラの砂干潟,ドロドロの泥干潟まで,ほぼ全てのタイプの干潟で見つかる.さらには,マングローブ林からヨシ原,塩性植物などを巧みに利用し,乾燥をものともしないシビアな垂直移動を繰り返しているので,生息には植生が重要かと思いきや,裸地でも普通に見られる.過去にも底質利用に関するいくつかの研究があるが,室内や短期の実験であり,その原因も明らかになっていない.そこで,まず彼らの底質利用パターンと成長の関係を明らかにするため,砂利混じりの砂礫干潟,浚渫土からなる軟泥質干潟,自然に堆積した砂泥干潟を含む,3カ所を代表的な生息地として選定した. 3年間の分布調査の結果,砂泥干潟より砂礫干潟の密度が常に高く,その傾向は未成熟個体に強く現れていた.この傾向は,人工的に生息地を創出し,4年間継続した野外実験においても同様であり,新規加入も砂礫に多かった.そこで,成熟個体および未成熟個体について,砂礫由来,泥由来の個体を砂礫ケージ,泥ケージでひと夏飼育したところ,由来は問わず,砂礫ケージにおける未成熟個体の成長が20%強良かった.なお,3つの干潟では,珪藻量は砂礫が泥よりも多い傾向が見られたが,詳細な摂餌メカニズムは不明である.フトヘナタリの底質利用パターンと成長の関連を考察する.


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