| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-267
近年多くの両生類が減少していることが知られているが、その主要な要因の一つとして病原体の感染が考えられている。適切な保全を考える上で、両生類の病原体に対する抵抗性を維持することが重要である。カエルの皮膚上には、感染抵抗性を担う自然免疫系で機能する抗菌ペプチド(AMP)が分泌されている。AMPは抗菌性のあるタンパク質の総称で、幅広く多細胞生物に存在しているが、アカガエル科では特に多様な種類が発見されている。抗菌ペプチドの多様性がどのような遺伝子構成からなり、どのように遺伝的多様性が創り出されているのかを明らかにすることは、集団中での多様性の維持機構を解明する上で重要だと考えられる。しかし、抗菌ペプチドがゲノムDNAにどのようにコードされ、多様な抗菌ペプチドが発現しているのかについては明らかになっていない。
ヤマアカガエル(Rana ornativentris)において、AMPグループの一つであるTemporin1に分類される抗菌ペプチドは7種類見つかっている。しかし、それらのAMPをコードするゲノムDNAについては調べられていない。そこで本研究では、ヤマアカガエルのTemporin1ファミリーの遺伝子構成を調べることを目的とした。Temporin1遺伝子のゲノムDNAクローニング、cDNAクローニング、サザンハイブリダイゼーションを行った。その結果、同じ種類のAMPをコードする遺伝子座が複数存在すること、集団内で遺伝子コピー数に個体間変異が存在することが示唆された。