| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-271
生物はしばしば生存上の利益では説明できない「装飾」形質をもつ。艶やかな赤や黄色の鳥の羽毛はその好例であり、これらの形質は異性に好かれたり、同性を威圧できるなどの性選択上の利益があると説明されてきた。しかしながら、装飾がどのように進化したかについてはよく分かっていない。現在みられる装飾は過去の性選択によってもたらされたものであり、過去の性選択は直接測ることができないためである。仮説としては2つ提唱されている。ずっと変わらず性選択を受けることで現在みられるほどの装飾を発達させたのだという「永続的性選択」仮説と、その時々で性選択を受ける形質がダイナミックに変わり、過去に性選択を強く受けた形質が装飾化して現在まで残っているという「動的性選択」仮説である。どちらの仮説が重要なのかは形質の装飾化と現在の性選択の関係を調べれば分かるだろう。永続的性選択仮説が重要なら装飾化が進む形質ほど今も性選択を強く受けており、動的性選択仮説が重要なら装飾化と今の性選択に明確な関係性がみられないはずである。ただし、この予測を検証するのに必要な装飾化の定量的測定は存外難しい。生態的な背景の異なる異種間で装飾化を比較することはできないし、同種内でもクジャクの目玉模様と体色など、系統の異なる形質ではどちらが派手か普通は客観的に判断できない。本研究ではツバメに着目した。本種はすべての装飾(長い尾羽、その左右対称性、尾羽白斑、喉色、喉面積、胸色、尻色)が雌雄ともにみられるため、装飾の雌雄差を用いて各形質の装飾化の程度を評価できる。本研究では、ツバメの装飾の性的二型とそこに今現在働いている性選択の関係を調べることで動的性選択と永続的性選択のどちらが重要か調べた。