| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-278

森林性ハマトビムシ(端脚目)はどこから来たのか?

*笹子 由希夫, 柿沼 誠, 谷村 篤 (三重大院・生物資源)

ハマトビムシ類(端脚目)は世界各地から約250種が知られており、国内からは未記載種を含め約20種が報告されている。ハマトビムシ類の分布は、海岸のみならず内陸の森林土壌からも知られており、これは他の端脚目動物には見られない極めて大きな特徴である。これまで我が国において形態に基づくハマトビムシ類の分類学的研究が行われ、森林性種への進化学的関心も一部で払われてきた。しかし、分子生物学的手法による海岸・内陸性ハマトビムシ類の包括的な分類学的知見は乏しく、海岸から内陸への進出過程に関して不明な点が多い。本研究では、日本各地の様々な環境から採集されたハマトビムシ類のmtDNA COI・COII遺伝子領域を対象に分子系統解析を行い、森林性ハマトビムシ類の起源について考察することを目的とした。

ハマトビムシ類の分布調査・採集は2009-2010年にかけて、日本各地の海岸や内陸の森林・湖岸など約100地点で行った。得られた標本は種同定を行い、これと並行して同定された個体のmtDNA COI・COII遺伝子領域のPCR増幅と塩基配列決定を行い、得られた塩基配列から分子系統解析を行った.

採集された標本から、国内から報告されているハマトビムシ類のうち約85%にあたる7属17種が同定された。これらの種の分子系統解析により、各属のハマトビムシ類は同一のクレードを形成し、この点においては従来の形態分類を支持する結果が得られた。さらに、遺伝的に内陸森林性種は砂利浜・礫浜・干潟のような海岸に生息するPlatorchestia属の一部やPaciforchestia属と近い一方、砂浜にのみ出現するSinorchestia属やTrinorchestia属とは離れていることが明らかとなった。これらの結果から、森林性ハマトビムシ類は砂利浜・礫浜・干潟のような海岸環境に生息していた種から、独立して生じたことが示唆された。


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