| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-284

シコクオサムシにおける体サイズの高度変異に関与する要因

*土屋雄三(京大理), 奥崎穣(京大理), 高見泰興(神戸大人間発達環境), 曽田貞滋(京大理)

温度などの環境勾配上に分布する集団間では,局所適応にともなって生殖隔離に関係する形質が分化し,その結果種分化にいたる可能性がある。四国の固有種であるオオオサムシ亜属の1種、シコクオサムシは、生息地の標高に対応して集団毎に体サイズが大きく異なる。一部の中間的な標高域では大型の集団と小型の集団が近接して分布しており、体サイズ差よって集団間に機械的な生殖隔離が生じている可能性がある。

これまでの研究結果から、シコクオサムシは、標高1000m前後を境界として大型集団と小型集団の分布が分かれている事が分かっている。これは、生息地である四国の険しい地形的特徴により、地形的にとくに急峻な標高1000m前後には好適な生息地が少ないためだと考えられている。また、集団間の交雑実験によって、集団間の生殖隔離に雌雄の体長差の影響が認められた。このことから、シコクオサムシは体サイズ分化によって種が分化する可能性がある。

そこで,本研究では、集団間の体サイズ差を決定する要因を探究する事を目的とし,実験条件下での体サイズの可塑性と遺伝率について調べた。体サイズの可塑性は、温度を2条件に分けて,大型・小型各集団の幼虫の飼育実験を行う事で検証した。遺伝率は、大型・小型の集団内と集団間での交雑実験によってF1成虫を作成し、親子回帰によって推定した。結果、体長は発育温度の影響を受けるが、その変化は集団間の体長差を変化させる程には大きくない事が分かった。一方、体サイズの遺伝率は、体重で83~97%、体長で63~68%であった。つまり、体サイズは遺伝的要因に強く影響されていると考えられる。また、集団間の交雑では、雌雄の組み合わせ(交雑の方向)によって、F1のオスの体サイズが異なったが,メスの体サイズは交雑の方向で違わなかった。よって、雌雄で体サイズの遺伝の仕方が異なっている可能性がある。


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