| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-285
花形態の変異は、種分化や多様化などに直接かかわる形態変異のひとつであり、野外集団の花形態変異がどのように創出され、維持されているのかを明らかにすることは、生物多様性を理解する上で重要である。キク科の「花」は、合弁の花(小花)が集合した花序(頭花)である。小花には舌状花と筒状花があり(この二型の違いには、{i}CYCLOIDEA{/i}({i}CYC{/i})相同遺伝子が関与することが知られている)、通常、周辺部の小花は舌状花である。ツツザキヤマジノギク{i}Aster hispidus{/i} var.{i} tubulosus{/i} (以後、ツツザキ)は、ヤマジノギク{i}A. hispidus{/i} var.{i} hispidus{/i}の変種であり、長野県天竜川中流域にのみに分布する二年生草本である。ツツザキは、ヤマジノギクと異なり、周辺部の小花に舌状花から長い筒状花までの変異(ばらつき)があるという特徴をもつ。本研究では、ツツザキにおける集団内の極端な形態変異の創出・維持メカニズムを理解するための基礎として、自生地における各花形態タイプの出現頻度を調査した。その結果、ツツザキは河川敷にパッチ状に分布しメタ個体群を形成しており、各パッチで各花形態タイプの出現頻度が異なることが明らかとなった。発表では、各パッチの違いと各花形態タイプの出現頻度の違いの関係を考察し、集団内にみられる花形態のばらつきの存在について議論する。さらに、({i}CYC{/i})相同遺伝子を単離し、ツツザキにおける{i}CYC{/i}配列と表現型との対応関係についても報告する予定である。