| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-288

進化的に構築された食物網の崩壊と再生プロセス

*高橋大輔 (京大・生態研セ), Åke Brännström (IIASA), Rupert Mazzucco (IIASA), 山内淳 (京大・生態研セ), Ulf Dieckmann (IIASA)

複雑な食物網構造は進化生態学的な過程によって構築・維持されていると考えられる。生物多様性を理解するためにその過程は理論的に調べられており、これまでに提唱された理論モデルでは捕食者・被食者間の共進化が取り入れられている。しかし、それら理論モデルにおいて個体群動態と形質の連続的な進化とをつなげたものは少ない。本研究では、個体ベースモデルによるシミュレーションを用いて、相互作用が各個体にもたらす淘汰圧と群集構造の変化を個体群動態と進化の両面から統一的にとらえた。各個体は捕食者形質と被食者形質の二つの形質をもち、それらは個体間の捕食被食及び資源をめぐる干渉型競争を決定する。これら捕食被食関係と干渉型競争から導かれる増殖率と死亡率に基づいて各個体の死亡または増殖が生じ、個体群動態が進む。繁殖においては無性生殖を仮定したが、低確率で突然変異が発生して子の形質がわずかに変化するとした。シミュレーションにおいて、生産者から二次消費者といった三層の栄養段階からなる構造の構成がみられた。しかし、それは非常に大きなタイムスケールにおいては不安定であり、生産者のみからなる群集への崩壊と再構築を繰り返した。これら崩壊過程と再構築過程は、非常に速いプロセスであるという点は共通しているものの個体数や種数の時間変化はそれぞれ大きく異なっていた。さらに、これら速いプロセスに注目した解析から、再構築は一次消費者からの捕食圧が生産者の種分化を促進するトップダウン的な作用をによって進むのに対し、崩壊は生産者群集が被食を受けにくいものに置き換わることで消費者群集が崩壊するボトムアップ的な作用によってもたらされていた。


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