| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-303
釧路湿原では釧路川上流の農畜産業にともなう廃水などにより富栄養化が進行し、夏季に大規模なアオコが発生する事態が繰り返されている。富栄養化がトンボの生息状況に与える影響を探るために、塘路湖3調査区、シラルトロ沼3調査区、サルルン沼、ポン沼の各1調査区、キラコタン地区(池、湿地)5調査区で、トンボ目成虫のラインセンサス、幼虫の定量採集および水質調査(pH、DO、EC、BOD、NH4-N、NO2-N、NO3-N、PO4-P、Chl-a、SS)を行った。調査区ごとのトンボ成虫群集および水質(DOのデータは除外し、pHおよびEC以外は対数変換)のデータを用いて正準対応分析(CCA)を行った。その結果、第一軸の右にECの高い調査区が、左にPO4-P、Chl-a、NH4-Nの高い調査区が散布され、第二軸の下にNO3-N、pHの高い調査区が、上にBOD、ECの高い調査区が散布された。第一軸左側の調査区で個体数・種数とも少なく、右側の調査区で多かった。幼虫定量採集のデータも同様の傾向を示した。トンボ成虫群集の種構成は、第一軸の右側の調査区でムツアカネ、ヨツボシトンボ、ルリボシヤンマ属、アオイトトンボ属の構成比が高く、左側の調査区でクロイトトンボ、ミヤマアカネが高かった。第二軸の上方ではカラカネトンボ、エゾトンボ、エゾイトトンボが、下方ではマユタテアカネの構成比が高かった。
このように、富栄養化によりトンボの種数・個体数が減少している傾向、中でも、ムツアカネ、ヨツボシトンボ、ルリボシヤンマ属、アオイトトンボ属など特定の種がその影響を強く受けていることが判明した。これは、釧路湿原東部の塘路湖やシラルトロ沼でルリボシヤンマ属、アオイトトンボ属の個体数が過去2・30年前よりも減少している主要な原因であると思われる。