| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-304

住民の視点から見た地域生態系の変容と課題—北広島町生物多様性キャラバンの成果—

白川勝信(高原の自然館)

広島県北広島町は2010年3月に「北広島町生物多様性の保全に関する条例」を制定した.本条例では,「町長は、生物多様性の保全と地域振興のための活用を総合的かつ計画的に推進するための基本戦略(以下「生物多様性きたひろ戦略」という。)を定める」とされている.生物多様性きたひろ戦略策定に際し,広く町民の意見を反映させるために,北広島町では町内各地域および各団体においてワークショップを実施した.本報告では,一連のワークショップを通じて町民から得られた意見を整理し,本地域における生態系の変容が一般町民によってどのように認識されているのかを分析し,生物多様性保全の施策を進める上の課題を報告する.

ワークショップでは,はじめに生物多様性とその危機,及び町条例について説明し,続いてポストイットとワークシートを使って4つの質問に対する答えを参加者から集める方法で意見を集約した.4つの質問は次のとおりである「1.地域の自然で変化したと感じることは何か?(生態系の変化)」「2.その原因は何だと思われるか?(変化の要因)」「3.自然を利用していることがあるか?(生態系サービス)」「4.今後,利用し続けるために必要なことは?(解決策)」.

住民から出された2,732件の意見を生態系タイプごとに分けてみると,川(753件),里地(891件),里山(701件)で全体の約86%を占めた.これに対し,湿地(41)やブナ林(8)など原生的な自然に関する回答はわずか2%だった.また,変化の要因や解決策について比較すると,回答数が多かった川に関しては,原因や解決策として行政の施策を指摘する回答が多く,里地里山では,原因や解決策を住民自身の問題として捉えているものが多かった.


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