| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-309
三宅島は2000年7月~8月にかけて大噴火した。2000年の噴火活動により島は大きな被害を受けた。そのため降雨があると地表流によって地表面が浸食を受けるとともに、多量の地表流が一度に谷地形を呈する箇所に集まり渓床に堆積していた土砂を削り、多くの谷で泥流が発生した。そこで、土壌浸食の防止手段として効率的な緑化工法が求められている。一方、緑化によって外来種の植物を用いることは、自生種の生育地の消失やその遺伝子の撹乱を引き起こす可能性がある。離島という隔離された環境下にある三宅島の緑化にあたっては、三宅島の地域性系統の植物を使用する必要がある。そこで本研究では、三宅島で試験的に行われた地域性系統を用いた緑化地においてその植生変化を明らかにすることを目的とする。
火山灰を除去し地表面を露出させ播種・植栽を行なうバンカー工法は、2004年に2地域(伊ヶ谷・8牧区)で施工された。その後2007年と2010年に植生調査を行い、種名、植被率、最大高、優占度、群度を記録し、種組成を調査した。土壌は、三相分布、礫含量、pH等を測定した。
2010年の2地域における緑化地と対象地の平均植被率には、有意な差がみられ、緑化地の方が平均植被率が高いことが示された。一方、出現種数は伊ヶ谷では違いは見られず、8牧区では緑化地と対象地で有意な差が見られた。2007年と2010年の経年変化を見ると、2地点とも平均植被率は増加しているが、出現種数はあまり変化がなく(伊ヶ谷2~4種→2~5種、8牧区0~2種→0~3種)、主に出現する種は、ハチジョウススキ、ハチジョウイタドリである。
バンカー工法では、土壌浸食の防止手段として裸地となった地域を植物で覆う効果はあった。しかし、出現種数は植被率ほど増加していない。これからは元の植生に戻るよう木本植物を定着させることが必要不可欠である。