| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-315
日本各地でのタンポポ調査の結果から、形態的には外来タンポポ(セイヨウタンポポ、アカミタンポポ)と思われるタンポポの多くが、実際には在来の2倍体タンポポと外来タンポポとの雑種であることが報告されている。また、雑種の倍数性には3倍体と4倍体が確認されており、4倍体が多いことが報告されている。一方、2倍体と3倍体のタンポポ混生集団を調べた海外の研究では、4倍体はわずかに生じるのみであることが報告されている。これらは、小集団と広域とでは雑種タンポポの構成に違いがある可能性を示している。日本でもこうした雑種構成の違いがあるのかどうかを明らかにするために、在来の2倍体タンポポと外来タンポポの両者が混生するタンポポ集団を対象に、雑種判定と遺伝子型の決定を行なった。
調査は大阪府堺市大泉緑地公園で行なった.公園内の歩道沿いに約20m間隔で2×2mの方形区を設置し (73地点)、区画内の外来タンポポ、カンサイタンポポ、シロバナタンポポの個体数を数えた。外来タンポポについては初夏に痩果を採取し、フローサイトメトリー法により倍数性を決定した。さらに、痩果片を用いて8つのマイクロサテライトマーカー遺伝子座の遺伝子型を決定し、雑種タンポポの遺伝的多様性を調べた。
調査区では、外来タンポポ、カンサイタンポポ、シロバナタンポポはそれぞれ340個体、412個体、2個体であり、カンサイタンポポの割合が多くなっていた。外来タンポポの9割以上は雑種であり、そのうち約9割は3倍体の雑種であったことから、混生集団と広域では雑種タンポポの構成が異なることが明らかになった。雑種タンポポの遺伝子型は3倍体・4倍体の両者で多様性に富んでおり、雑種形成は少なからず起こっていたものと考えられた。