| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-331

広島県太田川流域に生息するキシツツジの保全と河川護岸の自然再生

*山崎 亙(広島大学大学院),中越信和(広島大学大学院)

キシツツジ(Rhododendron ripense )は、岡山県旭川から広島県、島根県、山口県、四国全域に大分県山国川までを生息範囲とする日本固有の植物であり、河川や渓流の岩場上に生息している。

近年、河川護岸の整備などによって岩場など自然護岸が激減し、河川の岩場などを生息地とするキシツツジは、河川からその姿が激減する状況となっている。レッドデータブック植物編では、岡山県(2010年)は絶滅危惧Ⅱ類、広島県(2004年)と鳥取県(2002年)は準絶滅危惧種、福岡県(2002年)は絶滅危惧Ⅰ類、大分県(2002年)は絶滅危惧ⅠB類に指定されるなど個体減少の激しさを物語ってる。 キシツツジは、土壌のほとんどない河川護岸に生息し、河川植生が持つ得意な生息域を獲得しているが、その生息方法は他の植物と同じように共生微生物の菌根菌 (mycorrhizal fungus)と共生することによって特殊な条件下での生息を勝ち取っている。

演者らは、キシツツジを採取後約一年間育てた苗木と6カ月間育てた苗木、3カ月間育てた苗木を植穴による植付けと一年前に採取した種子を和紙に貼付けて土壌に密着させる方法で土壌硬度15-31 mm程度の土壌に植栽と張付けによる生存試験を行い、定着方法と自然護岸生息の可能性について検討した。その結果、種子によるキシツツジの発芽率は、64%であるが植穴や繊維入り特殊土壌張付けよる苗木の試験後68日目の定着率は、86%、和紙による種子の発芽は、64%といずれの方法によっても非常に高い定着率と発芽率を示し、自然護岸への定着に大きな可能性が有ることを示唆された。


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