| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-340

草刈りと杭の設置によるサシバの狩場創出実験

*河村詞朗(岩手大院・農),東淳樹(岩手大・農)

サシバは里山生態系を代表する猛禽類であり、繁殖のために日本に渡来する渡り鳥である。近年、開発や耕作放棄の影響により、その個体数が減少しており保全上の対策が急がれている。既往の研究から本種の生息地においては採食環境の重要性が示唆されている(例えば東 2004, 植田ら 2004)。岩手大学保全生物学研究室ではこれまで本種の繁殖地における生態研究を行なってきた。その成果から本種の採食環境の特徴として止まり木が存在していること、止まり木の周辺に草丈の低い環境が存在していることが明らかとなっている(河村 2010)。そこで、本研究では本種の採食環境を創出することを目的に、前述のような環境を人為的に整備し、その効果を検証した。調査地は岩手県花巻市東和町における本種の繁殖地SNとした。本調査地では2007年から本種の行動観察を実施しており、調査地周辺における本種の利用状況が把握されている。調査地において、本種の採食行動が確認されていなかった範囲に杭の設置による止まり木の創出と草刈りによる草丈の管理を実施し、採食環境として好適な環境の創出を試みた。なお、実施区域は調査地内に2か所設置した。その後本種の行動観察を行ない、保全手法実施前と後における空間利用の変化を検証した。その結果、一方の保全手法実施区域において採食行動が頻繁に確認されたが、もう一方の区域においては採食行動が確認されなかった。利用が確認されかった区域は本種の営巣木から500m以上離れた位置に設定されていたとともに、その近辺でノスリの営巣が確認された。この結果から、本研究における保全手法は本種の採食環境創出において一定の効果があると考えられたものの、実施区域の選定には営巣木との距離や他種との競合関係を考慮する必要があることが判明した。


日本生態学会