| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-347
河川の流れは流体的な力ならびに河床の形状を規定することで,水生昆虫の群集構造に影響を与えている.その中でも水生昆虫は,流れに乗って下流の生息場所へ移動し,河床へ着底する際,礫などの河床粗度の背後に形成される滞留域の循環流にて,着底率が規定されると考えられている.そこで本研究では,小河川にて3種類の粗度を設定した人工水路を用いて,河床粗度による水生昆虫の着底効果について実験を行った.本実験は,北海道札幌市南区の砥石山を水源とする中の沢川の上流(水源から約3.5km地点)において2010年6月から11月までおこなった.実験区間は約30m,川幅約1.5m,水深約15cm)である.人工水路は,合板にて外枠(高さ25cm×幅21cm×奥行62cm)を構成し,河床粗度として水路底にレンガ(高さ6cm×幅20cm×奥行10cm)2個を,間隔3cm,6cm,12cmの3条件で配置した。各条件の人工水路を8個ずつ作成し,実験区間の河床に攪乱がおきないようにゆっくりと置いた.河床祖度の効果は,レンガ間隙内に設置したプラスチックケース内の水生昆虫数によって評価した。採集時は,プラスチックケースを,水生昆虫が逃げないように川から取り出し,ケース内の水生昆虫を70%アルコール水溶液にて固定した後,ラミジップケースにて保管した.本実験の結果,各レンガの間隙における水生昆虫群集の種数は有意差がなかったが,個体数には有意差がみられ,間隙の大きいレンガに高い値を示した.単位面積当たりの種数ならびに個体数はレンガの間隙により有意に異なり,狭い間隙に高い値がみられた.シンプソンの多様度については,レンガの間隙に有意差はみられなかった.本研究より,粗度により着底する水生昆虫の種に違いはみられないものの,水生昆虫の着底効果は変わると考えられる.