| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-004

二葉山におけるシリブカガシ個体群の保全生態学的研究

著者:*中野陽介(広島大),山田俊弘(広島大)

常緑高木のブナ科シリブカガシ(Lithocarpus glabra) が優占する群落は珍しい。広島市の二葉山は「日本の重要な植物群落―中国版―」(環境庁1979)にも取り上げられ、シリブカガシが優先する希少な群落として知られている。耐陰性を持ち閉鎖林冠下で生育可能であり、森林の境界部よりも中心部に多く分布すると言われているシリブカガシ(村上 2000)は、現在開発が進む二葉山ではエッジ効果の影響を受けやすく、個体群の存続が危ぶまれる可能性がある。そこで我々は、二葉山のシリブカガシ個体群の存続可能性を評価することを目的とした研究を開始した。現在、個体群動態を調査中であるため本発表では、二葉山及びシリブカガシの特性について調べた結果を発表する。

航空写真を用いた二葉山森林面積の解析した結果、二葉山の森林面積は1939年には53.8 haであったが、1946年には43.6 haとなり、その後も徐々に面積を減少させ2008年には28.7 haとなった。現在二葉山には保全条例などが制定されておらず、これからも開発が進む可能性が高いため、二葉山のシリブカガシ個体群への森林面積減少の影響は大きくなっていくだろう。

シリブカガシの分布パターンと親木と若木の距離についての関係性について見ると(まず二葉山に作成した40 m四方のプロットに出現した全てのシリブカガシ個体の大きさを測定し、位置を落とした。親木はDBH 10 cm以上のもの、若木は根際直径1cm未満のものと定義し、その距離と本数についてコルモゴロフ-スミルノフ検定を行った。)、シリブカガシの分布は親木の周りに若木が有意に集中分布していた。このことは、二葉山のシリブカガシは種子分散力が低く、一度壊滅的な被害を受けた場合に、自然遷移によって個体群が回復しにくい可能性を示唆している。


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