| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-031
果実が食べられ種子が糞や吐き出しによって散布される被食散布のうち、哺乳類に依存した種は果実が大きく、色が地味、熟すと香りや甘みが強いなどの特徴を有し、1ヶ所に多量に散布されやすいことから、発芽や実生の成長の特性は鳥散布樹種とは異なると予想される。そこで本研究は、哺乳類散布樹種の発芽に及ぼす被食の影響と実生の成長に及ぼす光環境の影響を苗畑の発芽実験により検討した。
ヤマボウシ、オオウラジロノキ、ケンポナシ、ヤマブドウ、アケビ、サルナシ、キブシの7種を、被食を想定し人為的に果肉を除去した種子(以下、種子)各800ないし1600個と果肉付き種子(以下、果実)各100ないし200個を苗畑に播種した。翌年5月上旬に寒冷紗を用い、光環境(rPPFD)が種子は4パタンになるように被陰した。毎週1回、発芽・生存・成長を追跡調査し、同11月に実生の苗高(主軸長)・根元直径・葉枚数を測定した。
ケンポナシは種子と果実のいずれもほとんど発芽しなかった。オオウラジロノキの種子は発芽したが、果実は全く発芽しなかった。ヤマボウシ、キブシ、サルナシは種子が多く発芽し、果実の発芽率は有意に低かった。ヤマブドウは種子だけでなく果実も発芽し有意な差がなかった。アケビは種子よりもむしろ果実の発芽率が有意に高かった。以上のように、樹種によって被食の影響は大きく異なった。成長まで調査できたケンポナシ以外の6種は、いずれもrPPFDと根元直径や葉枚数に有意な相関がみられた。オオウラジロノキはrPPFDが20%前半で最も成長したが、他の樹種は光環境が良いほど成長が良かった。種子サイズが比較的大きな樹種でも最適な光環境下では秋まで伸長成長する性質を有することから、これらは比較的大きなギャップで更新するのに適応していることが推察された。各樹種の発芽・成長の結果と果実・種子の形態との関係を解析して、哺乳類散布樹種にみられる特性について考察する。