| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-032

DNAバーコーディングを用いた植食動物の食性解析‐広範な植物種で効率的に増幅するプライマーの開発‐

*鈴木節子, 吉村研介, 吉丸博志(森林総合研究所)

DNAバーコーディングとは、DNAの特定領域の塩基配列をデータベース化し、生物の検索・同定ツールとして用いることを目的とした手法である。DNAバーコーディングには様々な利用可能性があるが、その一つとして野生動物の採食種同定への活用が挙げられる。わずかな試料断片からでもDNAが抽出できれば種識別が可能であるためである。通常、野生動物の採食種同定には、対象動物の行動や食害痕の直接観察、消化管・糞の内容物の観察によって推定されている。しかし、警戒心の強い野生動物の観察は困難であることが多く、食害痕も全ての餌種において残るわけではない。さらに、消化管・糞の内容物は咀嚼や消化で形状が変化しており、餌種の判別は科や目のレベルである場合が多い。以上より、野生動物の採食種同定へのDNAバーコーディングの活用が期待されている。本研究では、植食動物の食性解析を目的として、広範な植物種が含まれる消化管・糞の内容物から抽出したDNAから効率的に増幅するプライマー開発を行った。利用した領域は、陸上植物の標準的バーコード領域であり、現時点で最もデータが充実しているrbcLとした。DNAデータバンク(DDBJ)より、被子・裸子・シダ植物のrbcLの塩基配列を入手、アライメントを行った。プライマーを設計した部位は比較的変異が少ない場所を選び、プライマー配列はできるだけ多くの植物種が増幅するよう配慮した。1プライマーペアでは被子・裸子・シダ植物全てを増幅できるプライマーを設計できなかったため、被子・裸子植物とシダ植物のそれぞれに対して各1プライマーペア(計2プライマーペア)を設計した。今回の発表では、プライマー配列と各植物種の塩基配列の比較、設計したプライマーを用いて各植物種を対象に行ったPCRの増幅効率の結果等を報告する。


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