| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-035
ニホンジカ(以下、シカ)は餌資源が非常に制限された状況下において、それまで不嗜好性だった植物も代替餌として利用することが報告されており、そのことがシカ個体群の高密度状態維持の一因となっている可能性がある。代替餌として落葉があげられるが、その利用形態は未解明である。そこで、落葉の周年利用が確認されている洞爺湖中島において、GPS首輪を用いたシカの行動追跡によって落葉の利用形態の検討を行った。
GPS首輪はエゾシカ成獣メス5頭に装着し、約1年間追跡を試みた。追跡するにあたり測位間隔は通常6時間毎とし、また各季節に1回ずつ15分間毎の測位をおこなう期間を5日間連続で設けた。中島におけるシカの生息環境は落葉樹林(92%)、草原(2%)、人工林(6%)の3つに区分され、そのうち主な利用可能な餌は、シカによる長期に渡る採食圧により、草原の小型化した嗜好性草本と、落葉樹林の落葉となっている。そのためGPS首輪の活動量センサーにより“活動”と判断され、かつ落葉樹林を利用していた測位点の割合を落葉利用の指標とみなし、土地利用割合から落葉利用の季節変化を検証した。さらに、行動圏面積の季節変化についても検証した。
追跡個体の利用場所は、年間を通しほぼ落葉樹林であったため、小型草本よりも落葉の資源変動に左右されたと推測される。落葉の利用可能量は夏から秋にかけて増加するにもかかわらず、行動圏面積の平均は秋よりも夏の方が小さかった。先行研究より、落葉は春から秋にかけて低質になると言われているため、落葉を主食とした場合、シカは落葉の量だけでなく質の変動からも影響も受けて行動を変化させていると推測された。