| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-037

沖縄・屋久島・大阪の3地点における「種子-葉利用型」植食昆虫ヤマモモキバガの季節消長

藤田真梨子,前藤 薫(神戸大・農),松井 淳(奈教大・生物),高嶋敦史(琉球大・農),駒井古実(大芸大・環),湯本貴和(地球研)

ヤマモモMyrica rubraの種子捕食者であるヤマモモキバガThiotricha pancratiastisは、果実だけでなく新葉も利用する「種子-葉利用型」植食昆虫である。「種子-葉利用型」植食昆虫は専食性の種子食昆虫と同様に植物の繁殖成功に深刻な影響を及ぼすと考えられるが、その生活史や資源利用については未解明の部分が多い。これまでの研究よりヤマモモキバガは屋久島においては非果実期には新葉を利用して年多化の生活史をもつことがわかっているが、新葉を利用できる時期が地域間で変化するならば、その資源利用も地理的に変化する可能性がある。そこで本研究では沖縄県・屋久島・大阪の3地点においてヤマモモの登熟・展葉フェノロジーとヤマモモキバガ個体数の季節消長を調べ比較した。

ヤマモモは雌雄異株の常緑高木で6月から7月に液果を実らせる。2010年の4月~12月にヤマモモ樹冠下にリタートラップを設置し、果実と蛹化のために落下したヤマモモキバガの終齢幼虫を計数した。シュート上の新葉数は2ヵ月に一度記録した。

落下果実数は沖縄、屋久島、大阪でそれぞれ399.4個/m2、496.5個/m2、1044.2個/m2であった。ヤマモモの種子捕食者として同定された昆虫はすべての地域でヤマモモキバガ一種であった。いずれの地域でも展葉は初夏と秋にみられ、ヤマモモキバガは非果実期には新葉を餌資源として年数回発生していた。葉食幼虫数は沖縄で少なかったが、沖縄では採取した新葉の多くがヤマモモキバガ以外の昆虫に加害されており他の葉食者との競争がヤマモモキバガの個体数に影響している可能性が考えられる。ヤマモモキバガは、どの地域においても普遍的に種子-葉の餌資源転換を行っていることが明らかになった。


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