| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-038
複数の種を餌資源として摂取する消費者は、それぞれの摂取効率に応じて行動様式を変化させ、限られた採食時間を効果的に用いるように捕食活動と考えられる。消費者が雑食性である場合、増殖により強く貢献する餌資源に対しては、他の餌資源に比べて捕獲効率のみならず消化効率を高くするよう振る舞うのが適応的である。例えば、堅果類を効率的に消化できるか否かは、消費者の腸内細菌によるタンニン分解能が影響し、過去の捕食履歴によって分解能の強さが決まる(順化)。
本研究では、2種の被食者と1種の捕食者による系を想定して、捕食者による捕食行動適応と順化適応が系に与える影響について調べた。捕食行動適応は捕獲率に関する動的な変化、順化適応は(摂食量から個体数への)変換率に関する動的な変化とし、瞬間増殖率を増大させる方向へ可塑的に変化すると仮定した。
解析の結果、順化がある場合は、捕食者による餌種切り替えが緩慢になり、個体群動態は振動する傾向を示した。さらに、様々な順化係数をもった複数の個体群が共存する事も確認された。また、捕食者の個体数を固定して定常状態の解析を実施したところ、順化の影響が非常に小さい場合においても広いパラメータ領域で、多型の共存を引き起こした。これらの結果から、補食に関する順化適応は個体群動態を量的・質的に変化させることが示唆された。
本発表では、上記の理論モデルをさらに拡張させ、堅果類を餌資源として共有するクマとシカの系を想定し、クマのシカ補食を促進する要因について考察する。