| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-043
▼目的:樹木の種子散布の空間パターンは、散布後の種子・発芽後の実生の死亡率に影響し、結果的に樹木群集の構造や動態を左右するかもしれない。この仮説を検証するため、落葉広葉樹林(小川試験地、カヌマ沢渓畔林試験地)と常緑広葉樹林(綾試験地)の種子散布データ(100個以上のトラップで12年間)と実生の生残データ(種子トラップとペアになっているコドラート)を解析し、シミュレーションをおこなった。綾試験地は周食型散布種子の樹種、小川試験地は重力散布型種子の樹種、カヌマ沢渓畔林試験地は風散布型種子の樹種というように、それぞれ群集レベルで優占する種子散布のパターンに特徴がある。▼方法:実生の出現密度が種子散布密度に比例し、その比例定数は距離や光条件などを線形結合した値の逆ロジット変換である、とした統計モデルを構築し、階層ベイズ法で種ごとにパラメータを推定した。出現実生の1年間の生存率も、同様にモデル化した。そして、これらの統計モデルでシミュレーションをおこなった。シミュレーションで調べたいのは種子散布パターンの影響なので、観測された種子分布、ポアソン分布、負の二項分布の3通りを想定して種子散布パターンを出現させた。パラメータは事後分布にしたがってランダムに発生させた。▼結果:異なる種子散布パターンが生存実生の種間分布相関に及ぼす影響を評価した結果、どの試験地においても、種子がポアソン分布するときに、種間の重なりが最大となり、種の共存に不利な状況となることが示された。よって樹木の種子は均一に広く散布されるよりは、より空間的に不均質に散布される方が、樹種の共存は促進されるものと考えられた。